インデックスページへ

2007年春のプログラム 三作品連続上演  「我々をもてあそぶ見えない力」を巡って
 現在の世界に生きる我々は、自分たちにできないことはないという万能感を持っています。科学技術やメディアの発達がそれを支えています。世界や人間にもはや闇はなく、すべてが光の中にあるとでもいうような感覚です。それは人類が目指したことであり、もちろんとても素晴らしいことです。
 が、そのことが動物的存在としても、社会的存在としても、我々人間の内部のバランスを失わせているように思えます。バランスの喪失は、極端な傲慢さ、同時に傲慢とは裏腹の無力感を生んでいます。異様な犯罪の頻発も、このことに間違いなく関わっています。
 この三作を通じて、人間を越えた力について考えてみたいと思っています。運命の力、人間の関係が生み出す力、人間存在の深い所から生まれる力、いろいろな力について俳優と観客が作る生の場=劇場で模索します。 主宰 中島諒人

5月から7月まで毎月第一週の金・土・日  開演時間:金曜19:00 土曜13:00/19:00 日曜13:00

チラシ表 

公演の写真:5,6月公演 7月公演(スライドショー形式です。撮影/米井美由紀)

++++++++++++++++++++++++++++++++

5/4(金)・5(土)・6(日):「部屋」/「料理昇降機」H・ピンター

変だけどリアル。奇妙なエンディングをどう受け止める?

2005年のノーベル文学賞受賞作家の初期二作品です。ピンターの作品は、不条理劇に分類されます。確かに話の展開は一見意味不明にも見えます。しかしそれは人生とか生の把握の難しさ、わかりにくさとつながっています。我々は、日常が筋道だったもののように感じています。けれど日常はこれらの芝居のように、これらの芝居を越えて不条理なのです。そのあたりに迫ることで、この作家の「わかりにくさ」ゆえの豊かさをお見せできたらと思います。

「部屋」あらすじ
古い大きな集合住宅。冬の夕方。ある部屋で暮らす夫婦。妻ローズは幸せそうにてきぱきと家事をこなし、夫を仕事に送る。住宅のオーナーだという男、住む部屋を探しているという夫婦が訪れる。彼らの話はどれも奇妙でつじつまが合わない。ローズたちは、このアパートから追われるかもしれないと知らされる。彼女の存在が揺れ始める。そこに地下から男が現れ、彼女に語りかける。

ピンターの処女作。主婦の平穏な日常が、周りの人間の問いかけにより揺るがされ崩壊していくさまが、暴力的で恐ろしい。

「料理昇降機」あらすじ
暗いじめじめした地下室。二人の殺し屋が、昨夜あたりから指令を待っている。二人の仕事は、この部屋に送り込まれる標的を銃で殺すことだ。しかし指令はなかなか来ない。二人はいらだちながら、とりとめない会話で時を過ごす。突然指令が届く。けれどそれは料理の注文だった。部屋には小さなエレベータ(料理昇降機)があり、指令はそこから来たのだ。二人は戸惑いながらも、懸命に注文に応える。

こちらでは、「部屋」と違って筋の上でのズレや食い違いは起こらない。しかし、最後にとても奇妙なことが起こる。この終幕を、上演する側がどのように提示するか。観る側がどのように受け止めるか。

ハロルド・ピンター
1930年生 イギリス人。ロンドン東部で、ユダヤ系ポルトガル人の労働者階級の両親のもとに生まれる。1951年に舞台俳優となった後、1957年に「部屋」で劇作家に転身。反戦思想の持ち主で、NATOによるユーゴスラビア空爆やアメリカによるアフガニスタン空爆に抗議。2005年2月、劇作家からの引退を宣言し、反戦を訴える政治活動に専念する事を表明した。同年、ノーベル文学賞を受賞した。

ピンターの公式サイト(英語)
ノーベル財団公式サイト:ピンターの紹介(英語)

++++++++++++++++++++++++++++++++

6/1(金)・2(土)・3(日):「誤解」A・カミュ

この悲劇、神の不在によるのか、神の悪意によるのか?

カミュも不条理劇の代表的作家とされます。しかし、この作品には、筋の整合性のなさは全くありません。理路整然と明晰に話が進みます。我々が誰かに受け入れられ救済されることを求めても、それは不可能である。神も不在であり、例えいたとしても無力で愚鈍なものに過ぎない。救われたいと願う人間と、それを受け入れるものの不在という決定的なすれ違いこそが不条理であるというのが、彼の考えです。

あらすじ
さびれた土地を離れて海と太陽の国で暮らすことを夢見る娘と老いた母親。二人は自分たちが経営する宿屋に泊まる旅人を殺して、金を奪ってきた。そこへ、消息の絶えていた息子が自分の築いた財産で妹と母親を助けようと現れる。彼の素性に気がつかない二人。彼は、自分からは真実を明かさないで、母親に気付いて欲しいと願っている。母親は何か特別なものを男に感じる。しかし、すれ違いが重なり二人は男を殺してしまう。

不在の父親(神)を象徴するものとして、年老いた召使いが登場する。彼は一見のろまで愚かだが、事件を確実に悲劇へと導いていく首謀者のようにも見える。この作品では、人間存在は徹底的に救われないものとして描かれる。しかし、そこにはあらがえないものと闘った清々しさが残るようにも感じられる。1944年、ナチス占領下のフランスでこの戯曲は書かれた。人間存在の力強さ、闘う力、言葉の力を信じた作家のこの戯曲は、現在の迷走する世界状況に多くの示唆を与える。

アルベール・カミュ
1913年−1960年 フランス人。フランス系アルジェリア人の子としてアルジェリアに生まれ、貧民街で育つ。1957年度のノーベル文学賞を受賞。「異邦人」「ペスト」などの小説、「カリギュラ」などの戯曲が有名。自動車事故で死亡。

ノーベル財団公式サイト:カミュの紹介(英語)

※この上演は06年11月公演の再演です。鳥の劇場では、製作した作品を何度も上演し磨き上げていくとともに、その過程でより多くの新しいお客様に出会うこと、観ていただいたお客様にはより深く理解していただくことを目指します。一度ご覧になった方も是非もう一度ご来場ください。新しい発見がきっとあります。
06年11月公演写真  No.1  No.2  No.3  No.4  No.5

++++++++++++++++++++++++++++++++

7/6(金)・7(土)・8(日):「かもめ」A・チェーホフ

青年の自死を、弱さのせいだと笑えるか?

2004年に製作した作品を全面的に改訂して上演します。チェーホフは近代リアリズム演劇の代表的な作家です。不条理劇の作家ではありません。しかし、人間を動かす不可解な力に強く興味を持っていました。周囲に翻弄され、自殺する「かもめ」の主人公トレープレフにとって、世界は不条理な荒々しさに満ちていたはずです。彼が感じたに違いないこの悪魔的力の不気味さを、舞台の上に表せたらと思います。

あらすじ
静かな湖のほとり。裕福な地主の娘で女優志望のニーナと、作家としての自己確立を模索する彼女の恋人トレープレフ。二人とも自分の未来を手探りしている。トレープレフが、初めて書いた戯曲を、ニーナの主演で上演する。客席には彼の母親である女優アルカージナ、彼女の愛人で人気作家のトリゴーリンがいる。やがて彼を慕い始めたニーナは、その後を追ってモスクワへと旅立つ。二年後、作家として成功したトレープレフと、女優となったニーナが再会する。

アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ 1860年−1904年 ロシア人。ロシア南部の港町タガンログで、雑貨商の三男として生まれた。モスクワ大学を卒業して医師となるが、医師としての活動はほとんど行っていない。「かもめ」「ワーニャ伯父さん」「三人姉妹」「桜の園」は、チェーホフの4大戯曲と呼ばれ、ロシア演劇に近代自然主義をもたらした。世界の近代劇に及ぼした影響は計り知れない。1897年にスタニスラフスキーらが創設したモスクワ芸術座は、これら4大戯曲を上演して有名になり、現在もマスコットとしてかもめの図案を用いている。
モスクワ芸術座の公式サイト(ロシア語)

+++++++++++++++++++++++

主催:鳥の劇場
後援:鳥取県 鳥取市 いんしゅう鹿野まちづくり協議会 鳥取大学地域学部附属芸術文化センター 新日本海新聞社 鳥取市文化団体協議会
助成:アサヒビール芸術文化財団 芸術文化振興基金 ごうぎん鳥取文化振興財団

関連企画:戯曲の講座は「かもめ」6/9(土)13:00-16:00 鹿のスタジオ(旧鹿野幼稚園)
 電話0857-84-3268劇団事務所 または 電子メールinfo@birdtheatre.org  詳細 チラシ

+++++++++++++++++++++++

Copyright (C) 2006 BIRD Theatre Company TOTTORI All Rights Reserved.無断転載を禁止します。