BeSeTo演劇祭

日本・中国・韓国の三カ国の演劇人の連帯により、1994年以来毎年持ち回りで開催する演劇祭。新型コロナによる三年の中断以外は、どんなに政治的緊張が高い時も継続されてきました。BeSeToのBeは北京Beijinから、SeはソウルSeoul、Toは東京Tokyoから取られました。今は鳥取を日本の主開催地としていますので、最後のToは鳥取のToです。各国の委員会が選りすぐりの作品を派遣してくれますので、見応えのある舞台を楽しむことができます。

国際委員会代表

日本代表

 
  • 中島諒人
  • 演出家
  • 鳥の劇場芸術監督
  • (公財)利賀文化会議理事
メッセージ

 鳥取でBeSeTo演劇祭が開催できることをたいへんうれしく思います。前回の鳥取開催が2019年で、新型コロナの世界的大流行による3年の中止をはさんで、ついに5年ぶりに日本、鳥取に帰ってきました。

 日本・中国・韓国の3カ国は政治経済的に緊密な関係を持ちながら、常になんらかの課題を抱えています。でも、だからこそ文化的相互理解は深めなければいけません。文化交流による安全保障は重要な考えです。でも当たり前ですが、何かのために仲良くするなんてさびしい考えです。異なる文化と出会い、互いが互いを認め合うことで生まれる喜びは人間にとって本質的なものだし、人を成長させてくれます。

 BeSeTo演劇祭は、毎年各国持ち回りで開催しています。3カ国の代表委員が毎年会い、交流を深め、各国あるいは世界の状況の中での演劇の役割を確認しながら開催を継続しているものです。

 今年は、中国から芥川龍之介の短編を土台にした伝統劇と現代的なミュージカルコメディー、韓国から1980年の光州事件そして韓国で活躍したアメリカ人医療者を題材とした現代劇。日本からは兵庫県豊岡市に拠点を定める劇団青年団の代表作、そして鳥の劇場は親子で楽しめる人気作品を上演します。

 戦後80年の年に開催されるこの演劇祭が、3カ国の相互理解をより深める機会になることを確信しています。

中国代表

 
  • 陳涌泉
  • 中国戯劇家協会副主席・常務理事
  • 国際演劇協会(ITI)副会長
  • 国家一級戯曲作家
メッセージ

 BeSeTo演劇祭は、当時のITI(国際演劇協会)韓国センター会長であったキム・ウィギョン氏の提案に端を欲し、1994年7月に中国・韓国・日本の演劇機関によって創設されました。この演劇祭の名称は3カ国の首都の英語名(Beijing=北京、Seoul=ソウル、Tokyo=東京)の頭文字に由来します。1994年にソウルで初開催されて以来、韓国・日本・中国が毎年ローテーションで開催地となっています。

 アジアで最も長く続く国際演劇祭として、29回の開催の中で200以上の作品が上演されてきました。中国の京劇や韓国のパンソリといった伝統芸能から現代の実験的作品まで、東アジア演劇の多様性を示す場所となっています。また、ここでは日中韓の演劇人は各自のユニークな演劇様式を存分に表現し、創作経験を共有し、舞台芸術の発展を促進することができます。 同時に、この演劇祭は日中韓の人々の相互理解と文化交流を促進し、演劇の舞台上で3カ国の文化が融合し輝きを放つ場となり、日中韓の文化を結ぶ重要な架け橋となっているのです。

 『シャイニング・フレンズ』は、柳州市の伝統歌曲「劉三姐」の旋律に着想を得た、柳州の文化的要素を盛り込んだ軽やかな現代コメディミュージカルです。友情・成長・自由・喜びといった普遍的なテーマを掲げるこの作品の音楽とユーモアをぜひお楽しみください。

 昆劇『竹林三昧』は、日本の作家・芥川龍之介の小説「藪の中」を原作としています。原作の核心を忠実に受け継ぎつつ、中国文化と昆劇の美学を通して新たに再構築しています。昆劇の豊かな様式美が、登場人物の複雑な内面世界を外化させると同時に、この作品は昆劇の新たな実践における大胆な一歩を示し、中国と世界の芸術表現をつなぐ革新的かつ先駆的な作品となっています。

韓国代表

韓国代表 ユン・ハンソル
 
  • ユン・ハンソル
  • BeSeToフェスティバル韓国委員会芸術監督
  • 劇団GREENPIG常任演出
  • 韓国芸術総合学校演劇院教授
メッセージ

 こんにちは。韓国BeSeTo委員会 芸術監督のユン・ハンソルです。

 2025年、鳥取で開催されるBeSeToフェスティバルを心よりお祝い申し上げます。
また、丹念に作品をつくり上げ、舞台に立たれるすべてのアーティストの皆さまに敬意を表します。

 韓国BeSeTo委員会からは、『ロゼッタ』と『時間を塗る人』の二作品をお届けいたします。

 『ロゼッタ』は、アメリカ人女性医師ロゼッタ・シャーウッド・ホールが朝鮮の地で医療と教育に生涯を捧げた実話に基づく作品です。
異国の地での献身的な歩みを、静かな感動とともに描いています。一冊の日記から生まれた物語は、時代を超えて響く愛と犠牲の意味を私たちに問いかけます。

 『時間を塗る人』は、5・18民主化運動の最終抗戦地である旧全羅南道庁での出来事を、一つの家族の視点から描いた創作劇です。
白い紙を使ったオブジェ劇の形式で、記憶と現実、夢が交差する幻想的な舞台空間を作り出しながら、家族の物語と5・18 民主化運動 の悲劇を重ね合わせます。

 どちらの作品も、言葉や文化の違いを超えて、観る人の心に深く届くものがあると信じています。

 暑い夏に汗を流しながら準備されたこのフェスティバルを、どうか存分にお楽しみください。

 最後に、この催しを実現するためにご尽力くださった日本BeSeTo委員会の皆さまに、心より感謝申し上げます。

国際委員会

日本

代表
中島諒人(演出家 鳥の劇場芸術監督)
委員
金森穣(演出振付家 舞踊家 りゅーとぴあ舞踊部門芸術監督 Noism芸術監督)
志賀亮史(演出家 百景社主宰)
重政良恵(劇団SCOT制作)

中国

代表
陳涌泉(中国戯劇家協会副主席 劇作家)
委員
尹暁東(中国戯劇家協会副主席 中国戯曲学院院長)
傅亦軒(中国戯劇家協会秘書長)
唐灵依(中国戯劇家協会国際部副部長)

韓国

代表
ユン・ハンソル(劇団GREENPIG常任演出 韓国芸術総合学校演劇院教授)
委員
チョ・マンス(演劇評論家 国立忠北大学校教授)
チャン・ヘウォン(国立慶国大学校教授)
イ・ソンゴン(演劇評論家 韓国芸術総合学校教授)
チョ・ヒョンジュン(安山文化芸術展堂公演開発チーム長)
キム・オクラン(東国大学校大学院演劇学科講師 演劇批評ウェブマガジンActio編集委員)
事務局長
イ・ジュンギル(韓国BeSeTo委員会事務局長)