© igaki photo studio
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近未来、夏。高原のサナトリウムには、不治の病におかされた患者たちが多く入院している。 下界から隔絶されたサナトリウムの面会室で、死を待つということの意味が、ゆっくりと流れる時間の中で 淡々と語られていく。 患者たちとそこを訪れる面会の人々や医師たちとの死や時間に対する観念の差異を浮き彫りにしながら、軽妙な会話を交えて、サナトリウムでの何も起こらない静かな午後が描かれる。
作・演出:平田オリザ
出演:島田曜蔵 大竹 直 村田牧子 井上みなみ 緑川史絵 串尾一輝 尾﨑宇内 中藤 奨 南波 圭 南風盛もえ 和田華子 瀬戸ゆりか 田崎小春 倉島 聡 松井壮大 山田遥野
舞台美術:杉山至
舞台監督:中西隆雄 三津田なつみ
照明・字幕:西本 彩
英語字幕翻訳:John D. Tamura
照明操作:高木里桜
字幕操作:佐山和泉
衣装:正金 彩 中原明子
制作:金澤 昭
『S高原から』は1991年に初演され、国内外で上演が続いてきた私と青年団の代表作の一つです。特にフランスではストラスブール国立劇場で上演されたあとも再演が続き、ヒット作の一つとなりました。
本作を執筆した当時、日本社会にはまだバブル経済のなごりがあり、世の中には浮ついた雰囲気が漂っていました。私はどうもそのような時代になじめず、高原で死に行く人々の、その死の直前の静かな時間を描きたいと考えこの作品を創りました。
本作は、私が敬愛するトーマス・マンの『魔の山』と、そして堀辰雄の小説『風立ちぬ』がモチーフになっています。『風立ちぬ』はスタジオジブリのアニメ『風立ちぬ』の元となった作品なので、ご存じの方も多いかもしれません。
小説『風立ちぬ』の中では「皆がもう行き止まりだと思っているところから始っているようなこの生の愉しさ」といった言葉が繰り返されます。この舞台では、通常とは異なる、愛の始まりと終わりが様々な形で繰り広げられます。その小さな変奏曲をお楽しみいただければ幸いです。
平田オリザ
劇作家・演出家の平田オリザを中心に1982年結成。以来、1980年代からこまばアゴラ劇場を拠点とし、平田オリザが提唱した「現代口語演劇理論」を通じて、新しい演劇様式を追求している。この実践的で新しい演劇理論は、1990年代以降の演劇界に強い影響を与え続けており、2020年からは江原河畔劇場(兵庫県豊岡市)を新たな拠点として、全国各地で多彩な公演活動を展開している。
企画制作:青年団/一般社団法人江原河畔劇場
【サテライト会場】米子市公会堂・とりぎん文化会館・鳥取県立美術館