© 이강물
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劇場では、公演チームが事前リサーチの最中である。
舞台空間を確認し、音の残響をチェックするメンバーたちの中で——ただ一人、異なる時間を歩いている清掃員、ムンさんの姿がある。
すべての人が劇場を去った後、ムンさんだけがひとり残る。
1つのリンゴが転がり、彼の足元で止まる。そして、公演の小道具だった白い紙が風に舞う。
その瞬間、ムンさんは魔法のように、遠い記憶の中へと引き込まれていく。紙から現れる人々、思い出、そして出来事たち。一瞬、現実に引き戻されるが、記憶は止まることなく押し寄せる。
そうして時間と記憶をさまよった果てに——
彼女は1980年、光州と向き合うことになる。
作:キム・ミンジョン
演出:ユン・シジュン
出演:ムン・スキョン コ・ウンビョル キム・チェヨン チェ・スラ イ・ジョンホン キム・スンテ キム・イェジン コ・チェハン
プロデューサー:パク・ソヒョン チョン・イルヒョン
演出助手:キム・チェヨン
ドラマトゥルク:キム・オクラン
音楽監督:パク・ソヨン
照明監督:パク・クァンソン
音響操作:コ・チェハン
舞台監督:イ・ジョンホン
字幕:カン・ギョンチョン
空間が主役となる作品『時を塗る人』
『時を塗る人』は、アジア最大級のブラックボックスシアターを有する韓国・光州市にある「アジア文化殿堂」で生まれました。以来、この作品は韓国中の野外舞台や小さな柿の木のある家や伝統的なプロセニアム式の劇場など多種多様な場所で上演されてきました。
この作品の真の主役は登場人物たちではなく、建物です。
光州では、旧全羅南道庁。
ソウルでは、ある女性の家。
そして劇場では、用務員がひっそりと暮らす舞台。
それぞれの空間が、物語の中心になります。
旧全羅南道庁は、過去の記憶を留める場所です。
5.18民主化運動*の静かな証人として立ち続け、その記憶を通して市民に慰めを与えています。
『時を塗る人』は、人々の暮らした空間を通して、物語を紡ぎます。
2025年のエディンバラでは、また別の建物が舞台となり、そこに刻まれてきた人生をその空間独自の視点から語ることになるでしょう。
そして、BeSeTo演劇祭では、新たな空間「鳥の劇場」が、また違った官公庁舎の記憶と静かな余韻を想起させてくれるはずです。
これらの空間は話すことはありません。けれど、ほかのどんな声よりも深く記憶しているのです。
この作品はそうした空間たちのまなざしを辿りながら、私たちの人生に流れる時間の流れをやさしく描き出します。
ユン・シジュン
劇団ハタンセ
空を仰ぎ、地を見下ろし、世界を見つめる――
そんなまなざしで舞台をつくる演劇集団。
子どもから大人まで、誰もが楽しめる作品づくりを大切にし、
日々の変化や時間の流れさえも、劇団ハタンセの舞台の材料になる。
2008年の創団以来、独自の表現と実験的な演出で新しい観劇体験を届け、
「空から地の果てまで、思いきり!」
その合言葉のもと、イランからアルゼンチンまで、これまで17カ国以上で公演を行ってきた。
ユン・シジュン
「演劇を通して、一生忘れられない記憶を贈りたい。」
演出と舞台美術の境界を取り払い、観客に新たな体験を提供する演出家、ユン・シジュンの演劇は、物語(ナラティブ)ではなく、多様な“言語”で構成されている。
彼にとって演劇をつくる過程とは、新しい言語をつくる過程であり、一つの“遊び”でもある。言語は一人で書いて話せるものではないため、演出家一人ではなく、参加者全員で完成させていくプロセスだ。
俳優の身体が舞台の中心に立ち、そこに舞台装置、衣装、小道具などが重なっていく彼の作品は、より激しく、エネルギーに満ち、観客に大きな感動をもたらす。


